今日は「美」について
お話しようと思います。
私が働いていた会社では
「美」に関してとても厳しい基準を
設けていました。
たとえば・・・
・ネイルは赤(手も足も)
・口紅も赤
・アイシャドーは会社が規定した色(ちなみに私は青)
(入社後、すぐにメイクレッスンがあり
インストラクターの方に肌の色に合わせて
アイシャドーの色を選んでもらいます。
そして会社が選んだ色を使い続けなければなりません)
・お化粧は濃いのがよい
・髪の毛は染めてはいけない
・見えるところにピンをさしてはダメ
・1本でも髪の毛が乱れていたらダメ
・産毛の濃い人は剃る
・お肌にニキビ・できものができたらフライト禁止
・自分の体型に合わせてオーダーメイドで作った制服のため
太って着られなくなったらフライト禁止
などです。
軍隊かと思うような内容に驚きました。
そして日本人の美意識からはかけ離れた内容に、
「正気の沙汰ではない」と
思いました。
〈お化粧は濃いのがよい!?〉
日本人にとっての「美」とは
自然なこと、自然に近いことを指す
のではないでしょうか。
お化粧が濃くても不思議がられなかったのは
バブル全盛期の時代だけだったと思います。
メイク実習では、お化粧品を全て塗りたくった結果
おてもやんと化した自分の顔をみて
笑うしかありませんでした。
しかし、暗い機内に行くとどうでしょう。
あんなに濃かったお化粧が
ちょうどよく見えるではありませんか!
そして赤い口紅は肌の色を1トーン
明るく見せてくれるので
お肌がとてもきれいに見えたのです。
納得せざるを得ませんでした。
〈ネイルは赤いのがいい!?〉
今どき赤い口紅に赤いマニュキュアをしている人を
街中で見かけたら
夜のご商売をされているのかな?と
勝手に推測して納得してしまいます。
まさか自分がそうなるとは思ってもいませんでした。
しかしそこには美意識の違いがあることに
気付きました。
というのは、欧米ではネイルケアをすることは
オーラルケア(口腔ケア:歯を磨いたりすること)と
同じ感覚だというのです。
つまりネイルケアをしていない人は
だらしのない人とみなされてしまうということ。
だからアメリカに行くとたくさんのネイルサロンがあり
美容院に行く感覚で皆さん通っています。
それは男性・女性関係なく、
老若男女関係なく、です。
つまりスタンダードが
「いつもきれいにネイルされた爪」
なのです。
制服も民族衣装だったのもあり、
それに負けない色が赤。
またネイルケアをきちんとしている
ことを主張するためにも赤。
洗練された女性を演出するためにも赤。
だったのです。
これは余談ですが
赤い色には腹立たしさを紛らわす効果がある
と言われています。
「赤」には体をよく動かすようにしたり
体の中に溜まったものを
エネルギーとして燃焼させるような
働きをしたりすることで、
ネガティブな怒りのパワーが自分自身を
傷つける前に、何らかの形で
外へ発散されるようにしてくれる色とのこと。
機内で色々なことに遭遇する私たちに
ピッタリの色だったのです。
そこまで考えていたのかはわかりませんが
偶然は必然だったのかもしれません。
〈フライト禁止を宣告された!?〉
入社してすぐに制服の採寸がありました。
オーダーメイドのため太った痩せたが一目でわかります。
私はシンガポールに住み始めて2か月半の間に
なんと!10キロも太っていました。
完全なるストレス太りです。
空気を吸うだけで10グラムずつ
増えているんじゃないか、と思えるほど
破竹の勢いで増えていました。
出来上がった制服が支給され、着てみてびっくり。
ファスナーが・・・上がらない・・・
息をとめてお腹をへこませると
やっと上がる状態。
もちろん呼び出しがかかりました。
「このままだと、フライトできません。」
頭が真っ白になりました。
テストで落ちたならまだしも
太ったから飛べないなんて・・・
悲しくて情けなくて悔しくて泣きました。
泣いても体重は減らなかったので
ダイエットに励みました。
1週間後2キロ減っていたので
なんとかフライト禁止令は免れることができました。
しかし周りのCAはスタイルのいい方ばかりで
いつもソワソワして落ち着かず
気付くと息をとめてお腹を凹ませていたのでした。
「美」の認識は人それぞれ
国それぞれ異なっており
自分の考えが全てではないことを
大変よく理解したのでした。
「異文化を受け入れる」
とても大切なことだと思いました。
2013.7.31
いとうあき