チーフの「有田」

 

航空会社には数千人の客室乗務員がおり

一日のフライト数も多いことから

一度会ったクルーとまた一緒にフライトできる機会

はとても少ないものです。

お客様との出会いも一期一会ですが

クルー同士も同じ。

そんな中で出会ったある台湾人クルーのお話。

 

 

 

 

彼はその日の客室責任者として

乗務していました。

彼の愛称は有田。

くりぃむしちゅーの有田哲平さんに似ている

ということから日本人クルーの間では

「有田チーフ」というコードネームを(本人の許可なしに)

つけていました(笑)

 

 

 

 

その日のフライトは東京への最終便

日本人のお客様ばかりの満席のフライトでした。

 

 

 

そんな日に限って「何か」あるものです。

飛行機のエンジンに不具合が生じてしまいました。

しかもお客様を機内にお迎えしてから

出発できない、とわかった最悪のパターンでした。

お客様の心理としては

「空港にお迎えが来てくれるのに待たせてしまう」

「到着が大幅に遅れて電車がなくなってしまったら

どうしよう・・・」

「帰って仕事しようと思ったのに」

「お腹すいたな」

「イライライライラ・・・」

など色々な想いをお持ちのことと思います。

私たちも何もできないことが心苦しく

どうしたらお客様に少しでも快適に

お過ごしいただけるのかを話し合っている時でした。

 

 

 

すると機内から笑い声が・・・

機内の大型スクリーンに映画

「Mr.Bean」が映し出されていたのです。

そう、ミスタービーンは音声がなくても楽しめる

喜劇の中の喜劇。

不満顔であるはずのお客様がみな笑顔でした。

そしてイライラで満ち溢れていた機内の空気が

一変したのを肌で感じたのでした。

その効果は絶大でした。

 

 

 

 

人は楽しいから笑うのではない

笑うから楽しいのだ

とはアメリカの心理学者ウィリアム・ジェームス。

おそらく有田チーフはこのことを知っていたのでしょう。

とっさの機転で「Mr.Bean」を放映した

有田チーフ、こんなにお客様の心理を

理解してくれているチーフがいたのかと

感動を覚えました。

 

 

 

 

その後のフライトはとてもスムーズでした。

30分ほど遅れての出発となりましたが

不満や不安をおっしゃるお客様は皆無。

この時間に30分遅れてお客様に怒られない

ことは奇跡でした。

そしてこのような状況でお笑い番組なんて

不謹慎だと日本人のお客様にお叱りを受けそうな

ものですがそのようなことも一切なかったことを

覚えています。

お食事サービスの際もみなさんニコニコ。

いつも以上にお客様との一体感?を感じた

不思議なフライトとなりました。

 

 

 

 

私はこのフライトからたくさんのことを

学びました。

 

接客業は謝ることばかりを先に考えてしまいますが

そうではないということ

 

お客様の笑顔をどのような環境でも

追及しなければならないということ

 

そのためには経験も必要だということ

 

そして何よりお客様のために何かをしたい

何とかしたいという

強い気持ちは人種の壁を越えて伝わる

ということ

 

 

 

 

その後「有田チーフ」から

尊敬と親しみの念を込めて「有田チーフ!」と

心の中で呼んだことは言うまでもありません。

 

 

 

2013.7.21

いとうあき


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